アクチノ閃石 actinolite 戻る
Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2 (Feに乏しいものは透閃石)

単斜晶系 二軸性(−)だが,2Vx=約80°であり,光学的正負は判断しにくいものもある(アイソジャイアーが観察できるほど粗い結晶はまれ)。 α=1.60〜1.66 β= 1.62〜1.67 γ=1.63〜1.67 γ-α=0.02〜0.03(Feに富むものは高い) Mg<Feのものは濃緑色でまれ。

形態/
通常は繊維状や細針状。

色・多色性/無色〜淡緑色。多色性は明瞭(X´=無色,Z´=淡緑色)。Feに富むとやや濃色になる。Feに乏しいもの(透緑閃石)は無色で多色性なし。なお,Feに富むものでも細い繊維状のものはほぼ無色。

へき開/2方向(C軸方向)に完全。C軸方向からはほぼ120°に交わる格子状に見えるが,それが認められるほど太い結晶は少なく,多くは細針状〜繊維状。C軸に直角の方向からは1方向しかないように見える(一見似た緑泥石とは,本鉱物は屈折率・干渉色が高く,斜消光するので区別は容易)。
消光角/C軸に直角の方向から見た,1方向しかないように見えるへき開線に対し,最大10〜20°程度(b軸方向から見た場合)。
伸長/

双晶/(1 0 0)の双晶が存在することがあるが,双晶が認められるほど粗大な結晶はまれ。

累帯構造/時にMg⇔Feの置換による累帯構造があり,結晶の伸び方向に緑⇔無色の色の変化が見られることがある(Feの多い部分は明瞭な緑色を帯び,Mgの多い部分は無色に近い)。

産状

・変成岩では,低温の変成岩に出現し,特に緑色片岩に多く含まれ,緑泥石・緑れん石・白雲母・石英などと共生する。また玄武岩質火砕岩が接触変成を受けたホルンフェルスのほか,蛇紋岩が接触変成を受けた部分にも直閃石などと共生して多く含まれる。なお,超苦鉄質岩(蛇紋岩)と結晶片岩の境では両者の反応生成物として緑泥石や滑石などと共に大きな柱状結晶をなして産することがある。

・火成岩には初生鉱物として認められず,変質鉱物として緑泥石・緑簾石・ぶどう石などと一緒に含まれ,特に輝石類が繊維状のアクチノ閃石に置き換わっている場合が多い(付加体の変はんれい岩など)。変質が進んだ変はんれい岩では岩石全体を貫く細脈状をなすこともある。



結晶片岩中の緑泥石
Ac:アクチノ閃石,Chl:緑泥石,Qz:石英(曹長石も混じる)
アクチノ閃石+緑泥石+石英+曹長石の典型的な緑色片岩の鉱物組合せで,それらの造岩鉱物は微細で識別困難なこともある(これ以外に白雲母や緑れん石なども見られることも多い)。
アクチノ閃石は緑泥石にやや似るが,平行ニコルではそれより屈折率が高く個々の細かい針状結晶の輪郭がややはっきりしている,クロスニコルでは緑泥石よりも干渉色が高く2次に達しオレンジ・赤・青色などに見えている(なお,白雲母は直消光で,干渉色は3次に達し緑色のこともある)。
一方,緑泥石は平行ニコルでは屈折率が低いため滑らかに見え,クロスニコルでは干渉色が低く1次の灰〜白で,このように暗褐色の異常干渉色を示すことも多い。



アクチノ閃石や緑泥石などを多く含む緑色片岩







花こう岩中の普通角閃石の変質物のアクチノ閃石

Ac:アクチノ閃石,Chl:緑泥石,Qz:石英,Pl:斜長石
花こう岩のマグマは数%の水分を含み,マグマの固結時にその水分がマグマから分離してその花こう岩自身に熱水変質を及ぼすことがある(自家変質作用)。その際,長石類はセリサイトやぶどう石などに,黒雲母は緑泥石に,普通角閃石はアクチノ閃石や緑泥石に変質する傾向がある。アクチノ閃石は緑泥石よりもやや屈折率が高く,干渉色も高いのでその区別は容易である。